地球温暖化の影響に関しては、多くの事柄がまだ評価途上である。しかしその中でもIPCC第4次評価報告書(以下、AR4と表記)が最も多くの科学的知見を集約し、かつ国際的に認められた報告書となっており、これが現在の世界での影響評価の主軸となっている。また、イギリスで発行されたスターン報告[1]も大きな影響力を持っている。
地球温暖化による影響は、気象や自然環境への影響と、社会や経済への影響とに大別される。 影響は広範囲に及ぶと予想されており、気象や自然環境への影響では、気温や海水温の上昇、海水面の変動(上昇)、異常気象や激しい気象の増加、気候の変化、生態系の変化、植生や地形(景観)の変化などが挙げられる。社会や経済への影響では、食糧生産や飲料水への影響、激しい気象や気候変化による物理的な被害や人的な被害、生活環境の変化、経済システムの変化、社会制度の変化などが懸念されている。既に一部では氷雪の減少などの顕著な変化が観測されている。 また日本においても、年ごとの降水量の変動幅の拡大や、米の品質の低下などの影響が観測されている[2]。また蔵王連峰における樹氷の出現高度が上がるなどの変化も観測されている[要出典][3]。
AR4 WG IIによれば、地球温暖化は、気温や水温を変化させ、海水面上昇、降水量の変化やそのパターン変化を引き起こすとされる。また、洪水や旱魃、酷暑やハリケーンなどの激しい異常気象を増加・増強させる可能性がある。また生物種の大規模な絶滅を引き起こす可能性も指摘されている。大局的には地球温暖化は地球全体の気候や生態系に大きく影響すると予測されている。ただし、個々の特定の現象を温暖化と直接結びつけるのは現在のところ非常に難しい。 また、こうした自然環境の変化は人間の社会にも大きな影響を及ぼすと考えられている。真水資源の枯渇、農業・漁業などへの影響を通じた食料問題の深刻化、生物相の変化による影響などが懸念されており、その影響量の見積もりが進められている。AR4では「2〜3℃を超える平均気温の上昇により、全ての地域で利益が減少またはコストが増大する可能性がかなり高い」と報告されている。
日本において起こりうる事象の予測も進められており、分析結果が出たものから順次発表されている[4]。洪水・高潮の被害域・被害額の増加、熱中症による死者数の増加、熱帯地方からの感染症の拡大、植生や農業・漁業への大規模な影響が発生し、21世紀末の被害額が毎年約17兆円(現在価値)に及ぶ可能性が指摘されている[2][5]。
[編集] 既に発生している影響の例
既に観測されている、温暖化の影響とされる、もしくは影響が疑われる事象の代表的な例としては、下記のようなものがある。
[編集] 地球全体
平均気温の上昇(右図)。極端な高温や熱波の増加、極端な低温の減少、大雨の増加[7][8]。
[編集] 極圏
- 北極海における海氷の減少
- 北極海では長期的な海氷の減少傾向が観測されている[10][9]。近年では2007年に特に顕著な減少が見られ[11]、本来ならば数mの厚みの氷が見られる時期の北極点においても、断片的な氷しか見られない状況などが観測されている。太陽光を反射する氷の減少によって温暖化がさらに加速することが懸念されているほか、極圏の生物にも深刻な影響が見られる。海氷に依存するホッキョクグマなどは生活基盤そのものの減少により[12]、絶滅の危機に瀕している。海氷の消滅によって海が太陽熱をより多く吸収し、それがさらに温暖化を加速する悪循環が懸念されているが、近年、このプロセスが実際に発生しており、しかも予測よりも速いペースで進んでいることを示す観測結果が報告されている[13]。
- 氷河や氷床の移動・融解の加速
- グリーンランドの氷床の融解速度が下記のIPCCの予測よりも加速していることが観測で明らかになっている[14][15]。南極の氷床の後退の加速も明らかになっている[16]。
- 氷河の融解速度も速まっている[17]。これによる真水資源への深刻な影響が懸念されている[要出典][18]。
- 土壌中の有機物からの炭素放出の増加
- 極圏の永久凍土の融解が観測されており[19]、地中に閉じこめられていた有機物が分解し、強い温暖化ガスであるメタンガスの放出が観測されている[20]。
- アラスカでは山火事が増加し、泥炭などの形で森林に蓄積されてきた有機物が燃焼することで、それまで温暖化ガスの吸収源であった森林が放出源に転じている[21][22]。
[編集] 温帯
多くの先進国が属する温帯においても、現時点で下記のような変化が観測されている。
- 気温の変化
- 日本において、異常高温や猛暑日の出現数が増加している[23]。また大雨の発生頻度も増加している[23]。
- 農林漁業への影響
- 日本において、高温の影響による米の品質の低下が顕著になってきている[24][2]。また果物の品質低下などの影響も観測されている[5]。
- 降雨の変化
- 降水パターンの変化や豪雨リスクの増大が既に世界的に観測されており、従来予測がむしろ控えめであった恐れも指摘されている[25]。日本においても降水量の変動が拡大し、小雨の年と多雨の年の差が激しくなっている。これにより渇水リスクと洪水リスクが同時に大きくなっており、局地的豪雨の増加なども観測されている[2]。
- 山火事の増加
- 米国西部などで山火事が増加しており、この地域における気温の上昇と強い相関を示している[26]。
[編集] 主たる報告書の内容
[編集] IPCCによる評価結果
(詳細はIPCC第4次評価報告書#第二作業部会報告書:影響・適応・脆弱性を参照)
2007年4月に第二作業部会(WG II)による報告書"Impacts, Adaptation and Vulnerability"(影響・適応・脆弱性)が発行された。この報告書は気候変化による自然および人類の環境への影響、およびそれらの適応性と脆弱性に関する現時点での科学的知見がまとめられている。報告書には下記のような内容が含まれる。
現在起こっている影響:
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- 既に自然環境は気候変化による影響、特に気温の上昇による影響を受けている。氷河や永久凍土の減少、湖沼や川の水温上昇、生態系の変化、海水の酸性化など。
- 人為的な温暖化の影響が既に物理的・生物学的に表れている可能性が高い。
将来予測される影響:
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